OVERVIEW
今年の夏の東京現代美術館にて、圧倒的な展覧会を僕達に見せてくれたイギリスのレジェンド、デイヴィッド・ホックニーの新たな作品集。さまざまな手法を試しながら、新たな世界を描き出す彼は、展覧会でも発表したように、現在拠点にしているノルマンディー（フランス北部）の景色を、iPadを駆使して描いたのち、再び絵画へと回帰しました。2020年から2022年にかけて、ノルマンディーのアトリエでキャンバスに描いたアクリル画40点を紹介するこの一冊には、パートナーであるJP、アーティストのハリー・スタイルズ、そしてホックニー本人の姿も収められています。「ドローイングやペインティングは、その人物を感じさせる手段として、写真よりもはるかに優れている」というホックニーの言葉の通り、その人が纏うオーラや見逃してしまいそうなムード、不意に見せる虚な目、刻まれた皺など、リアルでありながらも内側をも描いたようなポートレートとなっています。また、このポートレートは下書きもなしに、キャンバスに直接、すばやく描かれたもののようで、それについてホックニーは「ゆっくりとポートレートを描くことはちょっとした矛盾」と語っています。まるでiPhoneで友人の写真を撮るかの如く、自然体で描かれたそれらを見ていると、ホックニーの友人たちを紹介されているような、そんな錯覚に陥る一冊なのです。
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